同窓生からのお便り

日本語学校の思い出と受験勉強

 

橋本咲希

2020年度中学部卒業生

     高校の友人達と(左端が筆者)

 私は、2021年9月から慶應義塾ニューヨーク学院に通っています。この学校を選んだ理由は、現地校と日本語学校という異なる環境を同時期に過ごした経験から、アメリカでバイリンガル・バイカルチュアルの勉強を継続し、将来の選択肢を増やしたいという気持ちを強く持ったからです。2021年の夏に両親は日本に本帰国しましたが、私はアメリカに残り、慶應義塾ニューヨーク学院で寮生活を送っています。

 私は小学5年生の時に父の仕事の関係でメリーランド州に来て、現地校と日本語学校に入学しました。平日の現地校では、日本人以外の友人に囲まれ、英語で授業を受けるという初めての経験ばかりでした。逆に土曜日になると、日本にいたときと同じように日本語で授業を受ける日本語学校に通いましたが、日本語学校で毎週出る大量の宿題は正直辛いと思ったこともあります。それでもいつか日本に戻った時のことを考え、途中で投げ出さず頑張りました。宿題以外では、友人との楽しい思い出がたくさんあり、日本語学校に通い続けられたのはそのおかげかもしれません。

 日本語学校では運動会、新春祭り、さくら祭りなどたくさんの思い出があります。運動会では、当日ギリギリまで頑張って競技の練習をしたり、中1・中2では応援団に立候補して、暑い中みんなと積極的に練習に励んだりしました。新春祭りでは、所属していた合唱クラブとチアクラブの活動に参加し、何度もステージでパフォーマンスを披露する機会を得ました。中2ではさくら祭りのためのプロジェクトを発表する準備に、クラスが一丸となって力を注ぎました。コロナの影響でさくら祭りは中止となり、本番での発表は叶いませんでしたが、クラス内で成果を発表したのはよい思い出となりました。

 また、日本語学校で出会った友人を通して、友好の輪はさらに広がったように思います。たとえば、友人のお母さんが開いている日本語の勉強会に毎週参加して、仲間と励まし合いながら勉強を続けました。勉強会以外にも外で遊んだり、お泊まりをしたり、時にはハイキングに行ったりと、楽しい時間を過ごしました。現地校と日本語学校を両立する醍醐味は、現地校に通うことで生の英語とアメリカ文化に触れ、一方日本語学校では日本の学校と同じカリキュラムで勉強することにより、日本に帰国しても周りと変わらない学力を維持できることだと思います。日本へ本帰国をして英語を忘れないように、そして、日本語・英語だけでなく、多様な文化も学び続けていきたいと、自然に考えるようになりました。

 慶應義塾ニューヨーク学院は、世界各国で学んできた日本人生徒が集まっている学校です。多様なアイデンティティーを持っている生徒と触れ合える新しい学校生活を楽しんでいます。日本人以外の先生が多く、日本語の授業以外は英語で授業が行われるユニークな学校で、部活やイベントなどが盛んなところも気に入っています。慶應義塾ニューヨーク学院の受験では、日本語と英語の両方でエッセイ、個人面接、さらには日本の中学校レベルの数学の試験があります。現地校だけでなく、日本語学校で文部科学省が定めるカリキュラムに沿った勉強も続けてきたことが、合格へつながったのだと思います。

 2021年9月に入学してすぐに寮に入りました。毎日大好きな友達と時間を過ごし、宿題を一緒にやったり、時には悩み事相談会が開催されたり、楽しくて充実した時間を過ごしています。所属するダンス部では、アメリカの現地校では経験しなかった先輩・後輩という関係があり、それも刺激的です。部員自身が好きなダンスのジャンルを選び、課題曲が決まったあとはその目標に向かって、部員が一丸となって練習を重ねます。そんな時間はあっという間に過ぎてしまい、翌日の練習時間が待ち遠しくてたまりません。チームが一丸となって準備に取り組む大切さは、日本語学校でさくら祭りに向けてクラスで一致団結したおかげで最高の発表に結びついた成功体験を通して学んだように思います。

 慶應義塾ニューヨーク学院への入学のため、日本語学校は、2021年6月に退学しました。コロナ禍だったので、最後に先生や友人に会えず、とても残念でした。しかし、それまで多くの先生、友人、友人のご家族との出会いがあり、多くの温かい思い出や貴重な経験は今でも心の中に鮮明に残っています。このように、私を支えてくださった多くの先生や友人がいたからこそ、日本語学校を続け、未来に向けて選択肢を広げることができ、感謝の気持ちでいっぱいです。このかけがえのない思い出を胸に、これからもさらに多くの出会いを楽しみ、新しいことに挑戦していきます。

 

出典:みらい通信2022年1月号

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